ECRプラズマ生成型多価イオン源の開発と
生成したプラズマより引き出されるイオンビームの応用に関する研究と教育
固体や物質の第4の状態とも呼ばれ,宇宙の物質の99%はこの状態にあると言われています.
地球では,雷やオーロラといった形で観測されます.
プラズマは,荷電粒子と中性粒子によって構成され,気体とは違った特異なふるまいを示します.
磁場とマイクロ波
低圧力(10-3~5Pa)でも比較的高密度(1016m-3が実現可能という特徴を持つことから,以下のような幅広い利用がなされています.
これら多様なイオン種を一台で生成可能なユニバーサルソースの実現を目指しています。
はやぶさ2のイメージ(JAXAホームページより)
先進ビームシステム工学領域研究室紹介
炭素イオンビームを用いたがん治療法(重粒子線がん治療)は,正常細胞へのダメージを小さく抑えられることから世界的に大変注目されており,国内でも多くの治療施設が建造され,施術が行われています.その中で我々のグループは,実際に治療が行われている施設を所有する独立行政法人放射線医学総合研究所との共同研究を行い,次期小型先進重粒子線がん治療用加速器の構築に向けて,イオンビーム高収量化のための軽元素ガス混合効果に関する研究や,ECRに加えて新たな加熱機構の検討を行っています.
CNTやフラーレンなどのバイオ・ナノマテリアルの研究が盛んに行われています.これらの材料は,その構造内部に不純物を内包させることで様々な物性を示すことが示されています.我々の研究グループでは,フラーレンや鉄の蒸発源を開発し,フラーレン内部に鉄を内包させることを試みております.これはMRI造影剤等への応用が期待されています.
人工衛星にはイオンエンジンが搭載されており,その燃料としてXeガスが使用されています.エンジンから放出される低エネルギーのXeイオンビームが衛星表面に衝突することで,衛星の寿命を縮めてしまうという問題があります.我々の装置は単一のイオンビームを減速させ,材料に照射できる構成であるため,現在,Xeイオンビームが衛星材料に与えるダメージ評価を企業と共同で研究しています.
電子サイクロトロン共鳴を利用した効率的なプラズマの生成を行うために,各種パラメータの依存性(圧力,マイクロ波パワーetc.)の計測,より効率的なイオンビーム引出のための電極構築,イオンビームの収束・発散の制御と質の測定(エミッタンス測定),実際にターゲットへの照射も行っています.
我々は単一のデバイスで幅広い用途に適用可能なユニバーサルソースの実現を目指しています.タンデム型ECRISでは通常のECRISとは異なり,2つのエネルギー領域を同時に制御することができます.そのため,多種多様なイオンビーム生成の手段としてタンデム型ECRISの利用に注目しています.